高齢者の就業確保措置は進んでいるのか

労働・雇用 2022/06/01

コロナ禍の影響もあり、生活スタイルが一変した現在、雇用環境についても変わってきていると感じることがあります。飲食店に入った際など、ファストフード店などにも高齢者と思われる方がイキイキと働いている姿や、若者がやりたがらない仕事を積極的に取り組んでいる高齢者の方を目にする機会が増えたと感じています。年金制度の改正によって、将来の年金の受け取りが75歳まで先送りできることもありますが、現役世代に負けない働き方を選んでいる方を見ると、将来の自分のあり方も考えなければと敬服する気持ちにもなります。今月は、誰の将来にも来る70歳雇用に向けた項目をまとめてみます。

2021年4月に、高齢者雇用安定法が改正されました。内容は、これまでの65歳までの「雇用確保措置」に加えて70歳までの「就業確保措置」が加わったものになります。70歳までの就業確保措置の内容は以下の通りとなります。

①雇用による措置として

(1)70歳までの定年引き上げ
(2)70歳までの継続雇用制度の導入
(3)定年の廃止
②創業支援等、雇用によらない措置として

(4)70歳までに継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(5)70歳まで継続的に次の事業に従事できる制度の導入
(a)事業主が自ら実施する社会貢献事業
(b)事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
65歳から70歳までの就業機会を確保するため、①の雇用による措置以外の場合は、②の創業支援等の措置(継続的な業務委託契約や、社会貢献事業に継続的に従事する制度の導入を講ずる)を導入することとされました。

以上の項目となりますが、実高年齢就業者確保措置は努力義務とされており、強制力という点においては65歳までの雇用とは異なる考え方となっています。

上記(1)70歳までの定年引き上げと(3)定年廃止を除いては、対象者を限定する基準を設けることも可能とされており、現在の65歳までの雇用制度は現行のままですが、65歳以上はまだ緩やかな制度といってもよいでしょう。体力面、健康面、能力面などにおける基準を設けることで雇用の継続が可能かを判断することができます。ただし、事業主が勝手に基準を定めることではなく、労使の代表による協議等を経て、全般的に見ても高齢者を恣意的に排除するようなものではないことにするなどが望ましい考え方になっています。

例えば、今の時代ではあり得ませんが、男性に限るとか会社が認めた者に限るなど、男女雇用機会均等法やハラスメントに絡むことは避けなければならない問題になります。

日本の雇用慣行は、まだ定年制を採用する事業主が多いといえます。そんな中で一旦リタイヤした方の収入は、「年金」「給与」「「資産」という考え方があります。前述の定年制を廃止する事業主の割合も高くありません。そう考えると、今まで年金なんてあてにならないとか、若い世代がもらう時には少なくなっているとか間違った考え方を修正し、将来設計は自分自身で作るもの、年金も自分で作るものと考えていただき、公的保険の重要性を今一度見直していただくことで、70歳を超えても就労できる時代が来ることを期待したいものです。

 

公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫