公的年金シミュレーター試験運用開始。使い方や試算できることは?

年金 2022/05/10

2022年4月、厚生労働省が「公的年金シミュレーター」の試験運用を開始しました。公的年金シミュレーターでどんなシミュレーションができるのか、準備するものは何かなど、公的保険アドバイザーである筆者が利用した感想を交えてお伝えします。

 

公的年金シミュレーターでできる試算は

 

公的年金シミュレーターで試算できるのは、老後の年金です。遺族年金や障害年金のシミュレーションはできません。また、老後の年金においても、試算ができるもの、できないものがあり、試算額は概算です。試算できるもの、できないものの一部を下記にまとめました。

試算可否

制度名

説明

試算可能

在職老齢年金

60歳以降に厚生年金に加入して働きながら、厚生年金を受け取る場合、収入と年金が一定額以上になると、年金の一部あるいは全額が支給停止となる。

シミュレーターにおいては65歳以降、支給停止となる年金があれば、支給停止額を除く年金が表示される

全額免除・一部免除

一部免除は保険料が納付されたものとして試算可能

繰上げ・繰下げ受給

65歳より前に受け取る繰上げ受給、65歳より後に受け取る繰下げ受給の試算可能

経過的加算

厚生年金に加算される年金で、加算された額が表示される

試算不可

加給年金

厚生年金の家族手当である加給年金は家族の年齢等によって支給が決まる。シミュレーターでは非対応

在職時改定

65歳以上70歳未満の人が年金を受け取りながら厚生年金被保険者として働く場合、働くことによって増える年金は毎年10月に年金額に反映されるようになった。年金シミュレーターでは退職時に働いた分の年金が増える形で表示される

 

シミュレーションの方法

 

シミュレーションする方法としては、ねんきん定期便を利用する方法とねんきん定期便を利用せずシミュレーションする2種類の方法があります。

 

定期便を利用する方法

過去の年金情報が自動で反映されるため、入力の手間も省け、より正確なシミュレーションが可能です。なお、ここでいう定期便とは、2022年4月以降に送付された定期便を言います。2022年4月以降の定期便には、公的年金シミュレーターにアクセスするための二次元コードが記載されているので、スマホでコードを読み込んで試算します。

 

公務員の定期便など、日本年金機構以外から送られるねんきん定期便には、二次元コードは記載されていません。

 

1、二次元コードを読み込む

 

2、生年月日を入力し「試算する」をクリック

 

3、現在の働き方や年収が60歳まで続いたと仮定した場合の見込み額が表示されます。仮定が変化する場合は、下のバーで年収や年齢などを調整します。

 

定期便を利用しない方法

1、生年月日を入力し「試算する」をクリック

 

3、現在の働き方や年収が60歳まで続いたと仮定した場合の見込み額が表示されます。仮定が変化する場合は、下のバーで年収や年齢などを調整します。

 

定期便を利用しない方法

1、生年月日を入力し「試算する」をクリック

 

2、過去の年金加入状況を入力します

何歳から何歳まで、どのような働き方をしてきたか、厚生年金加入の場合は、その時の年収はいくらだったかを入力します。働き方が複数ある人は、その情報を入力する必要がありますから、やや手間がかかります。

 

3、見込み額が表示されます。

すべての働き方を入力し、「試算する」をクリックすると見込み額が表示されます。下記は70歳受け取り開始を選択したばあいの例です。

 

本格実施は改善後の予定

 

定期便がなくてもシミュレーションができるとはいえ、正確にシミュレーションしようとすると過去の働き方を一つ一つ入力するのは手間がかかります。シミュレーションサイトにアクセスして試算するというより、定期便が届いた時点で二次元コードを読み取りシミュレーションするのが、手間なく年金額を知る方法と言えそうです。

 

また、老齢年金といっても、老齢基礎年金、老齢厚生年金など種類が複数ありますが、その内訳は表示されないので、より詳しい情報を知りたい場合は、ねんきんネットのシミュレーションを利用するのが良さそうです。

 

とはいえ、現在、厚生労働省ではシミュレーターについて「国民の皆様の声」募集ということで、利用者の声を集めていますので、それらが反映されると使い勝手もよくなると期待できます。

 

また、本格実施の際は、所得税、住民税、社会保険料の支払い金額の概算額も表示される予定です。年金額によって税金や社会保険料はどの程度変わるのか、これら情報を知りたい人は多いのではないでしょうか。

 

本格実施の時期は未定ですが、自分の年金をより身近に感じ、意識も高められるツールになるのことを期待します。

 

公的保険アドバイザー 
前田菜緒