外国人労働者の脱退一時金が変わる?
人材不足、人材確保が困難な中、改正出入国管理及び難民認定法(改正入管難民法)が可決、成立しました。この法案は様々な問題を抱えていますが、労働力確保のためには外国人の採用が不可避になっている業種もありますので、人材確保の観点からも喫緊の課題ともいえます。
外国人雇用は、5年前と比べても約2倍の増加となっており、2017年10月の調査結果では約127万人にのぼります(厚生労働省調査より)。ただし、改正法で話題になった技能実習で働いている人は約20%と少なく、今後は建設や介護などを中心に、「特別技能」として外国人労働者の受け入れが進むことでしょう。
余談ですが、技能実習生のことでいえば、賃金の未払いや失踪が取り上げられていました。私のクライアントでも、中国から技能実習生を受け入れていましたが、いつしか仕事に来なくなってしまう人がおり、失踪してしまった例が相次ぎました。決して労働状況が過酷だったわけではありませんが、母国で学んだ日本の慣習や言葉の壁などが様々な要因で職場を離れてしまったとみられています。
改正法によって外国人が増えることで、年金の問題も出てきます。ご存知のように、年金受給に関する期間要件は10年ですが、10年未満で帰国する外国人労働者のために、出国後に受給できる「脱退一時金」の制度を改正する案も出ています。現在は3年が上限となっていますが、今後長期間に渡って働く外国人労働者の増加に伴い、上限を5年に引き上げることで一時金が増え、外国人労働者がより長く働ける環境を作ろうというものです。
そこで、厚生年金の脱退一時金の基本を確認してみましょう。
脱退一時金の受給要件は、
6ヶ月以上、厚生年金保険の被保険者期間があること
日本国籍を有しない者であること
老齢厚生年金の受給要件を満たしていない者であること
となります。また、受給ポイントとして、
国民年金の受給期間などがある場合には合算できること
脱退一時金の受給回数には制限がないため、何回か繰り返して日本で働いている場合はその都度請求することができること
国民年金法の脱退一時金の支給要件を満たす場合は両方を請求できること
があげられます。
脱退一時金の額は、被保険者期間によって変わりますが、6ヶ月間の被保険者期間で区切り、最高3年が上限となっています。
脱退一時金制度は、日本で働いた外国人の保険料の掛け捨てを防ぐためのもので、現在21ヶ国と社会保障協定を締結しています。社会保障協定とは、保険料の二重負担の防止や掛け捨てとならないために、本国の年金制度に加入していたとみなすもので、本国に帰った後も本国の年金を受給することができます。