マルチジョブホルダー制度のスタート
コロナ禍3年目になりましたが、働き方改革については徐々にではあるものの進んできています。高齢化社会を見据えた働き方もその一つで、新たな展開が今年1月から始まりました。雇用保険制度の「マルチジョブホルダー」制度です。名前だけ聞くと、とてもハイテクな仕事をしているようなイメージにも聞こえますが、今月はこの新しい制度についてどのようなものかお伝えしてまいります。
多くの事業所で、60歳定年制を採用されているところも多いのですが、現状の高齢者雇用安定法では60歳定年を超えて雇用を希望する方について65歳まで雇用を確保することとされており、2021年4月の改正法では、70歳まで雇用を確保することが追加されたことはご承知のことかと思います。しかし、65歳から70歳までの雇用義務は、あくまで「努力義務」という形になっていて、必ずしも雇用をしなければならないという強い言い方ではありません。内容については以下のようになっています。
- 70歳までの定年引き上げ
- 定年制の廃止
- 70歳までの継続雇用制度(再雇用・勤務延長制度)
- 70歳まで継続的に仕事に従事できるような制度の導入(事業主が実施する社会貢献事業や事業主が委託、出資等する団体が行う社会貢献事業)
完全に70歳までの雇用を明確にしている事業主であれば、必ず雇用を確保できるようになりますが、現状はこれからといった感じでもあります。
そんな中、働く意欲のある方を支援する制度の一貫として「マルチジョブホルダー」制度が創設されました。
しかし、この制度も多少複雑なところがありますので整理してみます。対象となる方は以下の要件を満たす方です。
- 複数の事業所に雇用される65歳以上の方であること
- 1つの事業所の週の労働時間が5時間以上20時間未満のものが2つ以上あり、その労働時間の合計が20時間以上になる方であること
- 2つ以上の事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上あること
これらが実現することで、雇用保険の給付(失業給付や育児・介護休業給付等)も受けることが可能となり、さらに働く意欲がプラスされるものと考えます。
ただし、1つ面倒なことがあるとすれば、手続きの書類をご自身で作成し、それぞれの事業主で証明をもらった後に住所地管轄のハローワークにご自身で手続きを行うことです。会社や社会保険労務士等が書類を作成することはできますが、提出には委任状が必要になるなどの手間がかかることもあります。
でも、これがクリアされれば大きなメリットが享受できるということです。
この新しい制度は、強制的なものではなく、働く方の任意での申し込みとなりますが、長い仕事人生の新たな1ページとしてトライしてみるのも幕開けとして良いのではないでしょうか。
公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫