脳・心臓疾患にかかる労災認定基準の改正
寒い季節になり、急な心臓疾患などで治療に至るケースが多い時期となりました。お風呂に入る際なども急に寒い空間に身を置くことになりますので注意してまいりましょう。
今月は、脳・心臓疾患の労災認定基準が本年9月に改正されたことを受け、私傷病でもあり、仕事関係の要因も絡むことの多い「脳・心臓疾患」の問題について考えてみます。
脳・心臓疾患の労災対象になる疾患は以下の9つとなっています。
・脳疾患:脳出血、くも膜下出血、高血圧性脳症
・心臓疾患:狭心症、心筋梗塞、大動脈解離、心停止(心臓突然死を含む)、重篤な心不全
今回の改正によって、重篤な心不全が追加され9疾患となっています。急性心不全も含め、仕事による負荷や基礎疾患などの絡みも多いため追加されたものと考えます。
また、これらの疾患が長期間の過重労働に起因することを受け、長時間労働の関連は以下のようになっていました。
・発症前1ヶ月間に概ね100時間または、発症前2ヶ月から6ヶ月間にわたって1ヶ月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合、仕事との関連性が高い
しかし、昨今の労働事情を鑑み以下が追加されることとなりました。
・前述の時間に至らなかった場合でも、これらに近い時間外労働を行なった場合には、労働時間以外の負荷要因も十分に考慮し判断する
これによって、発症に近接した時期の、仕事による急性の負荷と相まって発症することもあることから、労働時間以外の一定の負荷要因が認められる場合には十分に検討する必要があるとされました。
具体的には、発症前概ね1週間より前の業務については原則通り長期間の負荷とするものの、発症前1ヶ月間より短い期間に、特別に過重な仕事の負荷がかかった場合などで、発症前1週間を含めた期間の過重性を判断するとしたものです。
現代は、労働時間だけでなく、業務効率化の中仕事を進めなければならないこともあったり、また多くの言われなきプレッシャーもあったり、相当な負荷の中で仕事をしている状況を考えると、時間だけでは計りきれないものが数多くありますので、万が一の際にとてもいい改正であると感じます。
これらの負荷やストレスを避けるためには、勤務と勤務の間のインターバル時間をしっかりと設けることや、不規則な時間にならないことなどへの注意を自ら行うことで軽減されることも多々あります。
脳・心臓疾患は仕事による負荷だけでなく、長い年月の中での生活習慣も原因の一つとされています。定期的な健康診断はもとより、万が一働けなくなってしまった時のために、就業不能に関する保険を検討するなども一つの策ではあります。ストレス社会に負けずに「ワークライフバランス」から「ライフワークバランス」として、あくまで「ライフ」を優先していく考えもありではないかと考えます。
ご自身の働き方は、家族への配慮でもあります。新しい年を迎えるにあたって、今一度働き方も見直してみてはいかがでしょうか。
公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫