一年後に迫る社会保険適用拡大の対応は

税・社会保障 2021/10/01

パートタイマーなどで働く方へのさらなる社会保険適用拡大の話題も、あと一年後に迫ってきていることからお問い合わせが増えてまいりました。パートタイマーが社会保険に加入するラインをおさらいすると、週の労働時間が一般の従業員に比べて4分の3以上働く方が対象となります。パートタイマーなどの短時間労働者であっても、一般的に30時間以上働くような方が対象となるということです。この範囲は、501人以上の企業ではすでに適用されており、労働時間が4分の3未満であっても週の労働時間が20時間以上であるとか、賃金の月額が8万8千円以上であることなどを条件として被保険者になります。ここの加入ラインが、来年10月から従業員数が101人以上の企業に広がることになっています。
社会保険に加入することで負担が増えるのか、健康面での安心が増えるのか、将来の年金に反映されることでプラスになるのか、さまざまな意見がありますが、公的保険という観点から大切なことをまとめてまいります。

2年前のいわゆる「2000万円問題」では、蓄えが不足することで老後の生活に黄色信号が出てしまいますよという警告的な内容でした。それを危機感としてとらえるのか対岸の火事ととらえるのかは人それぞれだったかもしれません。しかし、現実問題として高齢化が進む以上避けては通れない議論となっています。

仮に不足しているという場合、その不安を解消するには働き続けることが第一かもしれませんが、「老齢リスク」という点では働くことができない現実も出てくるわけです。その際、民間保険も大切ですが、公的保険で賄う部分も大きくあることを認識していただくことも重要といえます。

その一つが社会保険の適用拡大で、これまで対象外とされてきた方たちも救おうとする制度があげられます。パートタイマーの方の意見としては、賛成派・反対派それぞれのお考えがありますが、反対派の意見は「社会保険料負担が大きい」、「収入が減ってしまう」、「働き方を変えなければならない」など否定的な考えも多くあります。どうしても、目先のお金のことや毎日の生活に目がいってしまい、将来を大きく展望するという点においては俯瞰できていない状況ともいえます。もちろん、今の生活を放り出してまで将来を設計しましょうということはいえませんが、いずれご自身に返ってくるということを理解いただく必要があるということになります。

ここで問題となるのは、事業主側がどのような対応を迫られるかということになります。福利厚生費費が上がることの懸念から、雇用契約の見直しなどを検討しているところもあるかもしれません。もちろん、前述したように、収入が減ってしまうことの不安から労働時間の短縮を申し出るケースも考えられます。このような雇用調整が自然に出てくるものであればその考えに乗ることになりますが、事業主主導で雇用調整を操作することは避けなければならない問題です。

社会保険加入の説明をしっかり行なっていただき、これまでの働き方では保険料負担が発生するが、会社も将来を一緒に守る体制であることを示していただくことが重要です。それは、今後人口が減少する中で、人材確保は大きな問題になります。事業を現状のように継続、あるいは今後も拡張していく中で、人材が不足してしまっては拡張もままならない状態に陥ってしまいます。単に社会保険料負担をマイナスととらえることが、正常な事業運営に大きな負担となることが推測できる時代になっています。

パートタイマーで働く方の中には、本当は正社員で働きたいのに、お子さんの育児や家族の介護でどうしても短時間で働かなければならない人も多くいます。そういう方たちは、これまでと同じ福利厚生を求めていらっしゃることも事実です。
事業主としての姿勢を明確にして、安心して働ける組織が望まれていると考えます。

 

公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫