2021年9月育児休業給付の被保険者期間変更を解説
2021年9月1日より育児休業給付金を受けられる要件が変わりました。今まで支給対象でなかった人も対象になる可能性がありますから、変更内容を確認しましょう。
被保険者期間の要件緩和
育児休業給付を受けられる被保険者期間の要件として、今までは「育児休業を開始した日」より前2年間のうち、就労した月が12ヶ月以上必要でした。しかし、改正後は「産前休業等を開始した日」より前2年間のうち、就労した月が12ヶ月以上ある場合も対象となりました。被保険者期間の基準日が育児休業開始日だけでなく、産前休業開始日も加わったということです。なお、就労した月とは、給料が支払われた日が11日以上ある月をいいます。
では、これにより何が変わったのでしょうか。例を見ながら確認しましょう。下の図を見てください。上段だと、現行では育児休業開始日を起点として就労日数をカウントしますから、①時点より以前を就労日数としてカウントします。(産前産後休業中は、就労していませんからカウントしません。)
しかし、実際は4月4日まで働き、5日から産前休業に入っています。3月26から4月4日まで働いているものの、就労日数が11日以上ないためカウントできず、就労した月12ヶ月以上という被保険者期間の要件を満たせませんでした。
一方、改正後は産前休業開始日を基準としますから、産前休業に入る直前までの日数、下段①の期間も就労日数として含められるようになりました。これによって、12ヶ月の被保険者期間の要件を満たすことができ、育児休業給付支給対象でなかった人も支給対象となる可能性が出てきました。
出典:厚生労働省「令和3年9月1日から、育児休業給付に関する被保険者期間の要件を一部変更します」
出産が予定日より早くなった場合
今回の改正は、出産日が予定日より早まったケースでも対象が拡大することになります。下記図を見てください。
AさんとBさんは入社日が同じ4月1日で、産前休業開始日も同じ4月5日です。しかし、Aさんは5月16日に出産し、Bさんは予定日より早めの5月1日に出産しました。Aさんの育児休業開始日は7月12日ですから、4月5日から産前休業に入ったとしても、3月12日から4月4日までは、就労日数が11日以上ありますから、被保険者期間としてカウントできます。
一方、Bさんの場合、育児休業開始日は6月27日です。現行だと4月5日から遡って3月27日までは就労日数が11日以上ないため、被保険者期間としてカウントできません。結果、育児休業開始日より前の2年間に就労した月が12ヶ月以上あるという要件を満たさず、育児休業給付を受けられません。
同じ入社日、同じ産前休業開始日でも出産日が早まると育児休業給付を取得できる人とできない人がいたのです。今回の改正では、Bさんは4月5日を起算として就労日数をカウントできるようになりますから、育児休業給付を取得できるようになります。出産日が早まった場合の不公平感も改善されたと言えるでしょう。
自分の休暇はいつから?事前に調べておこう
女性は、産前産後休暇、出産手当金や育児休業給付があるから子どもを産んだ後も働き続けられると言っても過言ではありません。筆者は以前、転職のタイミングが原因で、育児休業給付を受けられなかった女性から相談を受けたことがありますが、育児休業給付金や出産手当金があるのとないのとでは、数百万円もの差になる上、将来の年金も変わってきます。ご相談者は悔やまれていましたが、要件を満たさなければ給付を受けることはできません。
今回の改正は、育児休業開始日が2021年9月1日以降の方が対象となりますが、これから出産を控えている人は自分の産前産後休暇や育児休業給付について調べておくと、休暇に入ったあとも計画的な家計運営ができ、安心です。事前に調べてみてください。
公的保険アドバイザー 前田菜緒