【2026年8月改正】高額療養費制度はどう変わる?負担が増えるケース・減るケースを解説

健康保険 2026/04/29

医療費の増加や社会環境の変化を背景に、高額療養費制度の見直しが進められており、2026年以降、段階的な改正が予定されています。今回の改正では、自己負担の上限額や仕組みが変わるため、あらかじめ概要を把握しておくと安心です。本コラムでは、改正内容とともに、自己負担が増えるケース・減るケースの具体例もあわせてお伝えします。


改正の概要

今回の高額療養費制度の改正は、医療費が高額になった場合の自己負担の上限額や仕組みを見直すものです。現在は所得によって自己負担の上限額が異なりますが、今回の改正では所得区分をより細かく分けたうえで、自己負担限度額が段階的に引き上げられます。一方で、低所得者への配慮は維持されるほか、長期にわたって医療費がかかる場合に備えた「年間上限」が新たに設けられます。


この見直しにより、短期的には負担が増えるケースもある一方で、長期療養の場合には負担が抑えられる可能性もあります。一律の負担増ではなく、所得や受療状況に応じた仕組みへと再設計される点が特徴です。また、今回の改正は、医療保険財政の持続性を高めることによる保険料の軽減効果も見込まれています。


具体例で自己負担の変化を確認

まず、上限額がどのように変わるのか、概要を確認しましょう。以下が各所得区分における現行と改正後の高額療養費の上限額です。

出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」


①    年収600万円、1ヶ月の医療費自己負担が10万円のケース

上記資料の所得区分「約510~約650万 円」の欄をご覧ください。現行では、月額の医療費自己負担上限は約8万円です。そのため10万円の医療費がかかったとしても、実質の自己負担額は約8万円となります。しかし、令和8年の改正後は自己負担上限が約8.5万円、令和9年の改正後は約9.8万円まで引き上げられます。したがって、このようなケースでは負担増となります


②    年収600万円、定期的に医療費がかかっていたケース

過去12か月以内に3回以上、自己負担の上限額に達した場合は「多数回該当」と呼ばれ、上限額がさらに引き下げられる仕組みがあります。しかし、改正により上限額が上がることで、多数回該当から外れてしまうケースも想定されます。

たとえば、自己負担上限額が約8万円だったために多数回該当していた方も、改正後は上限額が令和8年8月に約8.5万円、令和9年には約9.8万円へと引き上げられるため、高額療養費の適用を受けられなくなる場合があります。高額療養費が適用されなければ、多数回該当も適用されず、8万2,000~8万5,000円ほどの医療費は全額自己負担となります。

出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」

一方、今回の改正で年間上限が新設されたことにより、多数回該当から外れた場合でも、上記図のように年間を通じると改正前より自己負担が少なくなるケースもあります。


③    年収200万円、多数回該当のケース

年収200万円の場合、現行の多数回該当における自己負担は1か月あたり約4.4万円です。仮に10か月治療を受けると、4.4万円×10か月=44万円となります。一方、令和9年の改正後は自己負担が約3.5万円に引き下げられるため、3.5万円×10か月=35万円となり、年間で約9万円の自己負担が軽減されます。


個人で対応すべきことは?

今回の高額療養費制度の改正は、「負担増」という側面が注目されがちです。しかし、実際にはすべての方の負担が一律に増えるわけではなく、本コラムでご紹介したように、負担が増えるケースもあれば、軽減されるケースもあります。また、この見直しは制度を将来にわたって持続させていくための措置であるという点も、あわせて理解しておくことが大切です。

そのうえで重要なのは、ご自身の収入から、どの程度の自己負担になるかを事前に把握しておくことです。負担が増える可能性があると感じる場合には、民間の医療保険の活用や貯蓄の準備など、早めに備えておくことも選択肢の一つです。

ただ、自分が今後、実際どの程度の医療費がかかるかは、予測できるものではありません。だからこそ、制度の内容をあらかじめ知っておくことで、万が一医療費が高額になった場合にも、落ち着いて対応できるようになります。制度を正しく理解し、ご自身に合った備えを考えることが大切といえるでしょう。


公的保険アドバイザー
前田菜緒


<参考>
厚生労働省:高額療養費制度の見直しについて
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001621844.pdf