新しい法律「フリーランス新法」のポイント
働き方改革、働き方の多様化、働き方にはいくつもの改革が行われているのはみなさんもお感じのことと思います。組織に属した働き方ではなく、自分のスキルを使って独立するスタイルが個人開業の事業主であり、最近ではフリーランスと呼ばれることが多くなってきました。
フリーランスは、働き方こそ自由であり、何者かに縛られる働き方ではなかったはずなのに、気がつけば労働者と同じような働き方になってしまっていたり、時間や発注の仕方に振り回されたりと、働く現場においては弱者とも取れる環境下で働く方も増えてきました。
本年11月に、フリーランスで働く方の環境を守るべく、いわゆる「フリーランス新法」が施行されましたので、ポイントをまとめてまいります。
この新しい法律ですが、内閣官房をはじめとして複数の省庁が絡む法律となっており、さまざまな角度からの見方をもつものとなっています。公的保険に関するもので考えると、育児介護等と業務の両立に対する配慮を行うことが設けられていますが、それ以外でも取引条件の明示やハラスメント行為に対する対策、契約の中途解除など、働く上で必要な項目が網羅されています。
では、なぜこの法律ができてきたのか経緯を見てみましょう。元は、2020年に「成長戦略実行計画」として閣議決定されたのをきっかけに、2023年には法案が国会に提出、スムーズに可決承認され今に至っていることを考えると、とてもスピーディーに進んだことがわかります。
それもそのはずで、2020年に内閣官房が調査した結果では、462万人がフリーランスとして働いており、そこに介在するさまざまな労働環境が明るみに出たことが、法律を進めさせた要因にあるといえます。
特に、デジタル社会の進展に伴う新しい働き方の普及(いわゆるギグワーカー、クラウドワーカー等)や、フリーランスを含む多様な働き方を、それぞれのニーズに応じて柔軟に選択できる環境を整備することが重要となってきていること、一方で、実態調査やフリーランス・トラブル110番などにおいて、フリーランスが取引先との関係で様々な問題・トラブルを経験していることが顕著になったことが大きな要因といえるようです。
一人の個人として業務を請負うフリーランスと発注事業者との間には、「個人」たるフリーランスは「組織」たる発注事業者から業務委託を受ける場合において、取引上、弱い立場に置かれやすい特性があるために、弱者となってしまう恐れがありますので、それを守る制度が必要になってきた背景があります。
前述した育児介護等と業務の両立に対する配慮については、フリーランスからの申出に応じて、6ヶ月以上の期間で行う業務委託について、フリーランスが妊娠、出産、育児または介護(育児介護等)と業務を両立できるよう、必要な配慮をしなければならないこと、6ヶ月未満の期間で行う業務委託について、フリーランスが育児介護等と業務を両立できるよう、必要な配慮をするよう努めなければならないことが定められています。
また、ハラスメントによりフリーランスの就業環境を害することのないよう体制整備その他の必要な措置を講じなければならないこと、フリーランスが、ハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由として不利益な取扱いをしてはならないことなどは、私たちが働く環境を守るものと同様になってきています。
上記以外にも、フリーランスではなく労働者として認められた場合には、雇用保険や社会保険の加入も必要になることから、福利厚生費用の負担も多くなりますので、環境の形を変えようとする動きもあるかもしれません。
しかし、大切なのは実態ですので、そこをきちんと見極めた上での対応を考えていただきたいものです。
公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫