2024年10月社会保険加入者の拡大、年金はどれだけ増える?
2024年10月から従業員51人〜100人の企業で働くパート・アルバイトが社会保険の加入者として新たに加わります。そこで、社会保険に加入することで、将来の年金がどのように変わるのかシミュレーションしてみました。
2024年10月からの加入対象者
今回、新しく加入対象となるのは従業員数が51人〜100人の企業で働くパート・アルバイトで下記4つの条件をすべて満たす人です。
1、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満(週所定労働が40時間の企業の場合)
労働時間とは契約上の労働時間であり、たまの残業時間は含みません。しかし、実労働時間が2ヶ月連続で週20時間以上となり、引き続き20時間以上になると見込まれるなら社会保険加入となります。
2、所定内賃金が月額8.8万円以上
この賃金は基本給と諸手当を指しますが、残業代や通勤手当、賞与などは含みません。
3、2ヶ月を超える雇用の見込みがある
4、学生ではない
年金はどの程度増えるか
では、今回社会保険に加入することで、将来の年金はどの程度増えるでしょうか。年金は「年収×厚生年金に加入して働く年数×0.55%」という計算式により、概算の金額を求めることができます。この式に当てはめて老後の厚生年金を計算してみましょう。
なお、年金は基礎年金と厚生年金の2種類がありますが、今回の改正によって増える年金は厚生年金であるため、厚生年金についてのみお伝えしています。
<ケース1:今後、年収120万円で15年間働く場合>
増える年金
120万円×15年×0.55%=約10万円
年間10万円、月額換算で約8,000円増える計算です。この金額は、今後厚生年金に加入することによって増やすことができる金額で、総受給額ではありません。年金の総受給額は今までの加入記録によるため、ここでは計算することはできませんが、50代の方はねんきん定期便に見込み額が記載されています。見込み額は、今の働き方が60歳まで続いたらという前提の金額であるため、今後、社会保険に加入する働き方になるなら、「年収×厚生年金に加入して働く年数×0.55%」の計算式で計算した金額が年金に上乗せされることになります。
さて、月8,000円増えると聞いて、多いと感じたか、少ないと感じたか、感じ方は人それぞれでしょう。しかし、この金額だけを見て判断するのは少し待ってください。なぜなら、年金は増やすことができるからです。
年金は65歳から受け取ることも65歳より前にも後にも受け取ることができます。65歳より前に受け取ると受給額は減りますが、66歳以降に受け取ると受給額を増やすことができます。今後、長く働くことで年金受給時期を遅らせることができるかもしれないことを考えると、増やすことも選択肢に入れて考えてみましょう。
<ケース2:今後、年収120万円で15年間働き、年金を70歳で受取る場合>
年金は1年遅らせると約8%増えます。5年遅らせることができれば8%×5年=約40%増やすことができます。先ほどの例だと月8000円増えるという計算でしたから5年遅らせることができるなら、毎月8000円×140%=11,200円増えるということです。
ここで、老後の厚生年金全体の受給額をイメージしてみましょう。かりに社会保険に加入しなかった場合の老後の厚生年金が月3万円だったとします。しかし、今回社会保険に加入することで8000円増えるため、合計38,000円になります。この年金を仮に5年遅らせると38,000円×140%=53,960円と、毎月15,000円増えることになります。
働くことによって増やした年金は8,000円でしたが、受け取り方によっては、厚生年金全体で見ると15,000円まで増やす方法があるのです。もちろん、この金額は5年遅らせた場合という前提があります。しかし、年金を増やす方法があることを考えると、年金記録を作っておくことが大切だということが分かります。
<ケース3:年収が増えた場合>
また、扶養を抜けることで年収の上限に悩まされなくなることも社会保険加入によるメリットと言えるでしょう。では、5年間年収120万円で働き、その後10年間年収200万円で働くことになったとしましょう。すると年金は
(120万円 × 5年+200万円×10年)× 0.55%=14.3万円
年間約14万円、月額約12,000円増やすことができることになります。先ほどのように年金の受け取りを5年遅らせることができるなら、さらに増えますね。
安定家計のために
今回新しく加入対象となった人たちは年収を上げないと、社会保険料の負担によって、今より手取りが減ることになります。手取りが減るとモチベーションが下がりますから、年収を上げられる環境であれば徐々に上げていきたいですね。
40〜50代の女性からは「体がキツくて・・・・」という声もよく聞きます。確かに仕事には体力が必要です。したがって、体力づくりと若々しいスタイル作りのために運動して医療費の削減も目指すという視点で働き方と家計を考えてみるのはいかがでしょうか。
公的保険アドバイザー
前田菜緒