フリーランスの労災保険はどうなるのか

労働・雇用 2024/04/01

今年も新入社員が入ってくる季節になってきました。初々しさを感じるとともに、Z世代ともいわれる世代が、どのように社会を考え、どのように仕事にコミットし、どのような成長ぶりを見せてくれるのか楽しみでもあります。Z世代というと、どのような印象を持たれるでしょうか。私のイメージとしては、実は仕事のこととか、将来のこととかを真剣に考え、どのような生き方をしてくのが最適か一生懸命考えている若者が多いという印象があります。ですので、「今どきの若いものは…」という先入観を持たずにあたたかい目でフォローしてあげたいと思うところです。

一方で、年度末を機にフリーランスに転向するという方もいらっしゃるかと思います。以前に比べ、フリーランスの方々の社会保障も変わってきていますので、公的保険に関する事項を改めてまとめておきます。

昨年、フリーランスで働く荷物配達員が配達中に起きた事故が労災である旨認定されました。その内容は、配送を業務委託する会社からの業務指示があったことや、労働時間がほぼ管理されていたことが「労働者」としての認定につながったとのことです。これまでは、業務委託として仕事を請け負う方たちは労働者ではなく、労災などの社会保障が受けられませんでした。しかし、本来の業務委託の主旨に照らし合わせて考えると、一般の雇用されている方と変わらない働き方をしていることが認められるため、考え方も変わってきています。

現在、フリーランスで働く人は約270万人ともいわれ、さらに拡大しているものと想定されます。そして、対象の方の勤務中の事故に対する補償を行うものが、「労災保険の特別加入制度」となります。業種としては、以下のようなものが対象となります。

  • 中小事業主
  • 大工
  • 芸能従事者
  • 個人タクシー
  • 漁師
  • 柔道整体師
  • 個人貨物運送業者
  • ITフリーランス

特別加入制度は、本来は労災保険の適用対象外であるフリーランスが、自らの意志で労災保険に加入するための制度です。これにより、業務中や通勤途中に事故に遭った場合でも、労災保険の保障を受けることが可能になります。しかし、会社で働く人とは異なり、自動的に保険の対象となるわけではありません。フリーランスが労災保険に加入するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。

大きな問題点としては、その業務を行う事業団体が必要となることです。料理配達員など、急増している業種では整備されてきているようですが、一定の要件を満たすことが必要になるため、法制度では適用されていても実際には団体として認められることが必要なため該当にならないケースもありますので、業種ごとに確認が必要です。

また、以前もお伝えしていますが、国民健康保険の、出産時にかかる産前産後休業期間の保険料減免は大きな改正といえます。これによって、世帯に出産する予定の国民健康保険の被保険者、または出産した被保険者がいる場合、世帯主に対して賦課する国民健康保険料の所得割額および被保険者均等割額が減免されることになっていますのでご確認ください。

多様な働き方の選択肢も増えますが、制度をうまく認識、活用しながら進めていくことが求められます。
 

公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫