老齢年金の繰上げ受給について

年金 2019/03/01

将来の資産形成をしていく中で、公的年金の果たす役割が大きいことは、公的保険アドバイザーのみなさまであればご承知のこと。ねんきん定期便に載っているデータと合わせて的確なアドバイスを提案することで、信頼を得ることも多いことでしょう。
ここ最近では、小泉進次郎議員がねんきん定期便の更なる活用を見据えての改善を行い、人生100年時代に向かうための心構えを示唆しています。

65歳までの雇用が当たり前になった現在、仕事をする側も雇う側も、70歳、75歳までの雇用を視野に入れて最善策を検討しています。
70歳、75歳の雇用を視野に入れることで、年金の受給開始年齢を70歳まで繰下げしましょうというアナウンスが以前からされています。しかし、一方では自分の納めた年金の保険料なので、早めにもらいたいという、国の考え方と反対の気持ちを持つことも理解できるところです。

先日、ある企業で従業員向けのセミナーを開催したところ、興味はあるものの自分の年金がどうなるのかわからない、ねんきん定期便は届いているが、今すぐ自分に降りかかる問題ではないので意識をしていないという方が圧倒的多数でした。

当協会のねんきん定期便セミナーでもお伝えしていますように、定期便には年金の見込み額が載っているのはもちろんですが、そこには生涯設計につながるプラスαの提案が隠されていることをお伝えすると、今まで興味がなかった方でもマジマジと定期便を見つめるようになり、まだ先と思っていた将来の資産形成に気づいていただけます。

年金を早めにもらいたいという方の多くは、年金を繰上げして受給すると減額になることを、あまり知りません。減額になっても早くもらいたいという方には、早くもらい始めた場合、65歳から受給した場合とを比較して、累計受給額が何歳で追いつくのかという話をすると、減額になるならやはりそのままにしようと思う反面、その年齢まで生きる自信がない方は繰上げしてもらおうと思う気持ちにもなるなど様々です。

では、下記の年齢に繰上げした場合と、65歳から受給した場合とで、累計受給額が何歳で追いつくことになるのか見てみましょう。

60歳:76歳8ヶ月
61歳:77歳8ヶ月
62歳:78歳8ヶ月
63歳:79歳8ヶ月
64歳:80歳8ヶ月

(出典:服部年金企画「公的年金のしくみ」)

あくまで試算ですのでズレはあるかもしれませんが、おおよその目安にはなるかと思います。
人生100年時代を迎えるにあたって、従来通りもらうのか、前倒しでもらうのか大きく判断に迷うところです。

また、繰上げ受給した場合、その後通常の率に戻すことはできませんし、万が一障害をおってしまった場合に、障害年金が受給できなくなります。

年金の支給開始年齢の繰上げは可能になっていますが、まだ自分自身での選択の余地は残されています。
繰り返しになりますが、「人生100年時代」というテーマが身近になりつつある今、公的年金と合わせた正しい情報を提案することが、公的保険アドバイザーの役目であると信じています。

(公的保険アドバイザー協会 理事 福島紀夫)