フリーランスの労災保険適用拡大を解説

労災保険 2023/12/07

フリーランスは原則、労災保険の適用対象外ですが労災保険適用の動きが広まっています。2023年9月には商品配達中のアマゾン配達員のフリーランスに、2023年10月に通勤途中に交通事故で怪我をしたフリーカメラマンに労災適用が認められました。そして、厚生労働省は2024年秋までにフリーランスが労災保険に加入できるよう法改正を目指しているところです。フリーランスと労災保険について、今後の方向性も含めて解説します。


労災保険適用となる事業者とは

労災保険は1人でも労働者を雇う事業所に適用される公的保険です。事業の規模や業種、雇用形態は関係ありません。労働者として事業主に雇われて給料をもらっている人が労災保険の対象です。そのため、会社の役員や事業主は労働者にはあたらず、労災保険の対象外です。また公務員も労災保険は適用されません。

とはいえ、中小企業の事業主や個人タクシー運転手など事業主ではあるものの、自ら労働者と同様の業務をしている場合、実態は労働者と変わりません。そこで、特別に労災保険に加入することが認められています。これを特別加入制度といいます。

特別加入できる事業の対象は年々増えています。2023年12月現在、特別加入できる事業の対象業種を一例としてあげると下記の通りです。

  • 中小事業主(企業規模に要件あり)
  • 個人タクシー業者
  • 個人貨物運送業者(自動車、自転車、原動機付自転車使用者)
  • 大工
  • 漁師(漁船使用者)
  • ITフリーランス(プログラマー、SE、ウェブデザイナーなど)
  • 芸能従事者(俳優、スタント、監督、歌手、撮影、照明など)
  • 柔道整体師

保険料率は事業内容によって異なり、例えば個人タクシーなら1.2%、芸能従事者なら0.3%、漁師なら4.5%です。保険料は、これら保険料率に年間の給付基礎日額をかけた金額になります。

例えば、給付基礎日額が10,000円で個人タクシー事業なら
10,000円×365日×1.2% = 43,800円
年間の保険料は43,800円となります。

ただし、手続きにおいては、保険料を個人で納めるわけではなく、特別加入団体を通じて加入します。したがって、保険料に加え、特別加入団体に支払う手数料や会費が発生することがあります。

なお、フリーランスが雇用契約ではなく委託契約を事業者と締結している場合でも、実態が労働者と同様の働き方をしているなら、労働者と判断され、業務委託している事業者はそのフリーランスの労災保険適用の手続きをしないといけません。


全事業のフリーランスが労災保険適用へ

このように、フリーランスでも労災保険に特別加入できる制度はあるものの、現状は労災保険に加入できる事業は限定されている状況です。しかし、厚生労働省は原則、全業種が2024年秋までに労災保険に加入できるようにする方針です。保険料率は0.3%の案が出ており、特別加入団体の要件についても議論されているところです。

仕事中の災害はいつ起こるか分かりません。まして、フリーランスの場合、災害を被ると収入減少に直結します。保険料は自己負担であるものの、仕事中の災害が心配なら加入の検討は必要でしょう。2024年秋が目処とのことですから、詳しい内容が決まりましたら、また情報発信をしたいと思います。


公的保険アドバイザー 
前田菜緒