来年の今頃には、社会保険の適用拡大が一気に進み、50人を超える被保険者がいる事業主はパートタイマーであっても社会保険の加入が義務付けられることになります。おそらく1年はあっという間に経過しますので、この1年間はどのような議論が進むのか気になるところです。
社会保険の適用拡大だけでなく、短時間労働者や多様な働き方の推進、男性の育児休業の促進などを含め、今年6月に公表された「経済財政運営と改革の基本方針(いわゆる骨太の方針)」に細かく計画されています。
その中で、106万円や130万円といった「年収の壁」を気にせず働くことが可能になる社会保険の適用拡大、賃金の引き上げにも取り組むとされており、どのような働き方をすれば年収の壁が気にならなくなるのかポイントとなるでしょう。
今月は、高いのか、それとも超えられるのかという「年収の壁」問題について考えてみましょう。
年収の壁とは、税金や社会保険料を納めるいくつかのラインを指します。
- 100万円:住民税が発生
- 103万円:所得税が課される
- 106万円:社会保険の適用拡大によって短時間労働者での社会保険加入が適用される
- 130万円:配偶者の社会保険被扶養者からはずれる
- 150万円:配偶者特別控除の減少が開始
- 210万円:配偶者特別控除がゼロになる
このようにいくつかの壁がありますが、公的保険の観点では106万円と130万円が該当します。
みなさんは、社会保険に加入せずにこの壁を気にしながら働き続けることがベストな選択とお考えですか?私たちはそうではないと考えています。
今の時代は、女性のM字曲線(女性が就職して、出産、育児を経てまた職場に戻る年齢の曲線)のスタイルも変化していて、出産・育児をしながら継続して働く人が増えていますので、「M」という文字がなだらかになってきています。働く女性が増えていく中で、年収の壁を考えて第3号被保険者のままでいることが良い選択なのかを考える時期に来るということです。
働く時間を増やすことができるのであれば、家庭年収を増額できますし、社会保険の加入は自分の将来への仕送りを作っていくことと同じであると私たちは考えています。
今後、加入期間の延長や年金額の実質減額もありうる年金の改正なども視野にあり、少子高齢化によって年金の給付水準は徐々に引き下げられていきます。特に、国民年金の水準低下が問題視されるほど、低下幅をいかに縮小するかというのも大きなテーマの一つになります。
加入年齢が長くなり、平均余命が長くなることで働く機会も継続しますし、働くことで賃金が増えることで投資などの選択肢も増えて、プラスに転じることが増えていく流れができます。
第三号被保険者のままの年金でいいのか、働くことで収入を増やすのか、年収の壁は自分の中の壁でもあることを認識していただき、叩き壊してみるのも良いのかもしれません。
公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫