フリーランスの働き方に備える公的保険

税・社会保障 2023/06/01

コロナ禍が少しずつ開けていき、数年前の活気が戻りつつあります。都内や観光地は人出も多くなり、人が少ないのに慣れたことからかとても密集している感じも否定できません。

そんな中でも働き方の考え方について相談も多く、これまでのようにテレワークを主体としていいものか、社会が動き出しているからリアルに出勤すべきではないかとの意見も増えてきました。この数年間で慣れた生活スタイル、仕事のスタイルを強制されることを嫌がる人たちは、自らのスキルアップのためにフリーランスへとシフトする方も出てくるのではないでしょうか。

今月は、フリーランスになったときでも困らない社会保障、公的保険の立場から考えてまいります。

まず、基本的にフリーランスの方には公的保険は適用されないということが前提となります。労働者ではなくなるため、お勤めしていたときのような福利厚生が薄くなってしまいます。

例えば労災ですが、賃金を受けて働く方を対象としますので、フリーランスの方は事業所得となり非該当となります。そのため、民間の保険商品でカバーすることになりますが、一部の業種に限っては国の労災制度を受けることができる方がいます。それが、「特別加入制度」です。これまでは、建設現場などで働く、いわゆる「一人親方」といわれる方の制度でしたが、その幅が広がり、一定の要件を満たし、保険料を納めることで万が一の際に補償が受けられます。ただし、業種が限定されていますのでご確認ください。

万が一の補償については、ご自身がいくらくらいの補償を受けたいかによって変わってきますし、保険料は全額自己負担になりますので、その点がお勤めになっていたときと異なりますが、補償内容については同等となります。

次に雇用保険についてです。労災と同様に基本的には適用されませんが、週末起業などで平日は会社勤めで兼業されている方は、そのまま雇用保険制度に加入したままフリーランスとして活動することができ、完全にフリーランスで活動することとなるまでは雇用保険の適用を受け続けることができます。ただ、実際に受けられるのは、退職したときに受給できる基本手当(失業給付)ではなく、教育訓練制度や育児休業給付金などの継続給付がメインとなります。

基本的に基本手当は受給できないとお伝えしましたが、雇用保険制度の改正があり特例措置が受けられることになりました。2022年7月から、「事業を開始した方が事業を行っている期間について、最大3年間を受給期間に算入しない」という特例が発表されました。通常は退職後1年以内に受給しなければならない基本手当ですが、フリーランスになって3年間について猶予するというものです。

具体的にいえば、フリーランスとして独立したけれど、事業が思わしくなく2年で廃業することになった場合に、残り1年間の受給期間が特例として復活し、退職時の基本手当が受けられるというものです。このように書くと、廃業が前提のように思われてしまうかもしれませんが、独立するにも覚悟が必要ですが、辞める覚悟も必要ということです。傷口が大きくならないうちに決断することで、新たな道を模索する期間を設けてくれたということになります。後ろ向き的な考え方ではありますが、万が一の際には適用を受けることができますのでご確認ください。

最後に社会保険ですが、会社を退職後にフリーランスになった場合は、国民健康保険、国民年金の加入が必須となります。ここで注意することは、国民健康保険を選択した場合、お勤め時代の報酬で保険料が決まりますので、高収入な方ほど保険料負担が大きくなることでの準備を忘れないということです。起業する費用ばかり目が行きがちですが、自分の生活のための資金もとても大切です。国民健康保険料、国民年金保険料、そして住民税などの負担も検討しておきましょう。
 

公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫