給料46万円以上で育休手当は上限に

雇用保険 2023/05/09

2022年に育児休業の制度が改正され、女性はもちろん男性も育児休業を取得する話をよく聞くようになりました。それに伴い、育児休業制度への理解度も上がってきたように感じます。しかし、一方で、育休手当である育児休業給付金に上限があることを知っている人は多くありません。給料が約46万円以上の人は、育児休業給付金の上限に達します。上限額と上限額による家計への影響についてお伝えします。


給料46万円以上なら給付額は上限に達する

先日、公的保険アドバイザーである筆者のもとに、30代のご夫婦が相談に来られました。もうすぐ赤ちゃんが生まれるとのことで、これからの家族のライフプランを考えたいとのことでした。

出産予定日は10月で、妻は翌年3月まで、夫は10月と11月に育児休業を取得する予定のようです。そこで、まずは収支確認のため、お二人の年収をうかがったところ、夫婦とも年収は850万円とのことでした。

今後、産前・産後休業と育児休業を取得することになりますが「その間は、給付金が給料の6割ぐらい出ると聞いています。」と、ご相談者は言います。おっしゃる通り、産前・産後休業中の給料代わりとなる出産手当金は標準報酬月額の3分の2の額ですから、約6割に相当します。標準報酬月額とは、社会保険料を計算するために、給料を一定額で区切った金額で1か月の給料とほぼ同じ金額です。

ご相談者の場合、毎月の給料が額面で約60万円とのことですから、その3分の2である40万円が出産手当金として産前・産後休業中に受け取ることになります(産前・産後休業終了後に振り込まれることもあります)。ところが、育児休業給付金は単純に給料の6割ではありません。一般的には、給料の6割と説明されますが、育児休業給付金には上限があります。

育児休業給付金は

休業開始時の賃金×67%(育児休業開始から181日目以降は50%)

という計算式によって算出されますが、上限額は、給付率67%で305,319円(令和4年)、給付率50%で227,850円(令和4年)です。

上限を賃金に置き換えると、305,319円÷67%=455,700円が上限となり、給料がこの金額より多くても給付額が増えることはありません。ご相談者は「え? 30万円が上限?」と少しショックな様子でした。

育児休業給付金は非課税の上、休業期間中の社会保険料は免除されるため、上限にかからなければ休業開始前の給料の手取りの実質8割は確保できます。しかし、年収が高いと、この話は当てはまらないのです。


家計への影響はどうなる?

では、家計への影響はどの程度でしょうか。以下は月間の手取り収入を表したものです。お二人とも月収は60万円ですから、手取りにすると45万円程度です。妻は9月から11月の約3ヶ月は産前・産後休業となり、12月から育休に入ります。青字の45万円が給料の手取りで、赤字の30万円が育児休業給付金、紫の40万円が出産手当金です。

育児休業給付金があることによって、働いていない期間でも収入が絶えないわけですから確かにありがたい制度ではあります。しかし、ご相談者の場合、夫婦とも育児休業期間中は40万円程度の収入があると思っていたところ、実際は30万円ですから、家計への影響は決して小さくありません。


月収46万円以上の人は、出産にあたり収支計画を

現在、政府は育児休業給付金を一定期間、引き上げることを検討しています。現在の給付率67%も2014年に50%から引き上げられた経緯があります。したがって、今の制度がずっと続くとは限らないでしょう。

今回の場合、夫婦とも育児休業期間が数ヶ月と比較的短かったため家計は大打撃とはなりませんでしたが、保育園の状況によって育児休業期間が長引きそうであれば、産前・産後休業開始前に貯蓄を多めにしておくことも考えた方が良いでしょう。赤ちゃんが生まれると出費も増えますから、給付金はいくらになるか事前に確認し、計画的に家計運営をしておくと安心です。


公的保険アドバイザー 
前田菜緒