高額療養費と限度額適用認定とは

健康保険 2023/03/01

高額な療養費を支払ったり、入院が長引いて医療費の自己負担額が増えたりすることは予期せぬときに起こりうるものです。こういったときに公的保険の健康保険では自己負担を減らすための制度があります。「高額療養費制度」と「限度額適用認定申請」です。急に降りかかってしまったことの対応と、事前にわかっている場合の対応で異なってきます。

今月は、いざ高額な医療費が降りかかってきた場合の対処についてまとめてみます。

まず高額療養費制度についてですが、1ヶ月あたりの医療費自己負担額が高額になった場合に適用されるものです。実際に医療機関での窓口で支払いを行い、事後に払い戻しを受けることになりますので、一旦自分のお財布から支払うため、高額になってしまうと持ち出しも多くなってしまいます。

仮に、その月の医療費が100万円かかったとすると、窓口での支払いは3割負担ですので30万円となります。大きな金額です。それを高額療養費制度で払い戻していただくことになります。

例えば、70歳未満の方で月のお給料が約40万円の方を想定してみましょう。全体の医療費の100万円から26万7千円を引いた金額に1%をかけ、その金額に8万1千円を足した金額が上限となり、高額療養費として21万2570円が戻ってくるという計算になります。この計算式は、年齢、毎月のお給料などによって変わりますので、実際に自分が直面することも想定しながら、民間の医療保険をどれくらい加入したら安心かという指数にもなってきます。

また、入院が長引くなど治療の日数が伸びる場合にもお得な制度となっています。過去1年以内に3回以上高額療養費の適用を受けた場合は、4回目から「多数回該当」となり、上限額が前述の8万円ほどと比べると4万4400円とさらに減額され、負担を減らす制度にもなっています。

さらに、同じ世帯の方が同じ月に医療機関を受診した場合や、同じ方が複数の医療機関を受診するなど、一つの医療費では高額療養費の対象にならない場合でも、「世帯合算」の考え方があり、2万1千円以上の治療費を合算して対象になる場合もあります。

ただし、高額療養費の対象になるものは治療を受けた全てのものではなく、食費や差額ベッド代、先進医療にかかる費用(特定の大学病院などで研究・開発された難病などの新しい治療や手術等)は対象外となりますので注意しましょう。

次に、事前にわかっているときは申請することで窓口での負担を軽減させておく制度、限度額適用認定申請についてみてみましょう。

長期的な治療になると予想される場合は、最長で1年まで申請をすることができます。また、実際に治療を受ける月以前の月は対象となりませんので、あらかじめ準備しておくことが求められます。

近年のがん治療などでは、働きながら手術や治療を受けるケースも増えてきていますので、該当しない月があったとしても1年の範囲を確保しておくと安心です。

限度額認定を行う場合でも、前述の高額療養費と同様に年齢、毎月のお給料との関係があります。

高額療養費は、申請後の支給まで2、3ヶ月程度を要することを考えると、事前に提出しておくことがベストではないでしょうか。

いつ降りかかるかわからない病気に対しての備えは必要です。しかし、必要以上の備えが本当に必要なのかを考えることも重要です。

公的保険は共助の考え方ですので、保障を受けられる安心感も感じていただけるとよいのかと思います。

公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫