医療保険は必要?不要?公的保険アドバイザー解説

税・社会保障 2022/03/07

医療保険を見直そうと思った時、そもそも医療保険は必要なのか疑問に思うことはないでしょうか。筆者は公的保険アドバイザーとして保険の相談に乗ることが多いですが、高額療養費制度があるから医療保険は不要という人もいれば、制度があっても医療保険は必要と考える人もいます。その違いは何でしょうか。医療保険は必要なのか不要なのか、考え方についてお伝えします。
 

医療保険は不要と言う人の共通点

医療保険を不要と言うのは、やはり高額療養費制度の存在が1番の理由です。高額療養費制度とは、医療費が1ヵ月で一定額を超えると、超えた金額が支給される制度です。収入によって自己負担額の上限が異なり、以下のようになっています。

収入区分(69歳以下)

1か月の自己負担上限額

年収約1,160万円〜

約25万円

年収約770〜約1,160万円

約17万円

年収約370〜約770万円

約8万円

〜年収約370万円

約6万円

住民税非課税

約3.5万円

 

例えば、年収約370万〜約770万円の人は、1ヵ月に健康保険適用の医療費がどれだけかかっても、自己負担は約8万円です。

医療保険に加入するなら、何十年と保険料を支払い続けることになります。月数千円といえども何十年も払うと高額になりますし、病気になったとしても入院の短期化でどれだけ入院するかが分からないなら、8万円を自己負担した方が良いという考え方です。

さらに健康保険に加入していると、仕事を長期休むことになったとしても、4日目から給与の3分の2の金額が支給される傷病手当金の制度もあります。公的保険だけでも充分充実しています。
 


医療保障は必要と考える人の共通点

高額療養費制度があるとはいえ、実際、数万円の支払いが発生するとイタイものです。それに、これからどんな病気で何度入院するか分かりません。そのため、医療保険が必要と考えている人が多いです。

しかし、医療保険が必要な理由はそれだけではありません。自己負担上限額があるのは、健康保険が適用される医療費のみです。ベッド代や食事代、通院費やお見舞い返し代は全額自己負担です。

また、実際に入院経験のある人は必要と考える人は多いように思います。乳がんで1週間入院した女性は、医療費のほか、ベッド代や雑費で5〜6万円かかったそうですが、医療保険に加入していませんでした。「入院すると、お金が結構かかるんだな、医療保険に入っておけば良かった」とおっしゃっていました。


医療保険を判断する3つのポイント

医療保険に加入する人の考え方、加入しない人の考え方についてお伝えしましたが、ポイントは3つあるように思います。

1、自己負担額の捉え方

高額療養費を利用すれば年収約370万円〜約770万円なら、自己負担上限は約8万円です。しかし年収が370万円の人と770万円の人では8万円の捉え方は違うでしょう。自己負担上限額を貯蓄から出す場合、その支出が家計にどの程度、影響を与えるのかは、その家庭次第です。

2、同じ月に退院できるとは限らない

高額療養費は1ヵ月にかかった医療費の上限額を定めるものです。もし、同じ入院期間、同じ治療内容でも1ヵ月20万円かかった場合と月をまたいで入院して2ヵ月で20万円かかった場合では、自己負担額が違います。

1ヵ月で20万円かかったのなら、高額療養費を適用すれば8万円の自己負担になりますが、月をまたいで合計20万円かかった場合、自己負担上限額は8万円×2か月= 16万円になります。同じ医療費でも、入院が月をまたぐと自己負担アップの原因となります。


3、働き方による違い

会社員や公務員など、健康保険加入者は、病気や怪我で4日以上仕事を休むと傷病手当金の制度を利用できます。給料が出なかったとしても、傷病手当金があれば収入の補填になります。

しかし、配偶者の扶養に入っている場合、傷病手当金の制度がありません。仕事を休むと有給を使わない限り、収入減につながります。これは,自営業も同様です。自営業なら有給はありませんし、仕事を休むことによる収入ダウンの打撃は大きいものです。



医療費だけでなく、生活全体を考えて

将来どれだけ入院するか、手術を受けることになるのか、これは、誰にも分かりません。そのため、医療保険に入るべきかどうか悩みますよね。

しかし、病気になってどれだけ収入減になるのか、また今後、教育費など必ずかかる費用がいくらあるのか、貯蓄がいくらなのか?費用がかかる時期に、病気になったとしても、医療費を払えるかなど生活全体を見渡すと判断しやすくなります。

ある程度の医療費なら貯蓄でまかなえそうなら、医療保険は不要ですし、そのために貯蓄をするという考えもあるでしょう。しかし、貯蓄から捻出するのは厳しい、病気や怪我になった時のリスクが怖いと思うなら、医療保険に加入しておいた方が安心できますね。

 


公的保険アドバイザー 
前田菜緒