出産費用が無償化へ!妊婦健診から出産まで、自己負担はどう変わる?
出産時の分娩費用が無償化される法律が2026年5月に成立しました。この制度の開始時期は未定ですが、2028年6月までには開始される予定です。今回の改正によって医療機関選定にも影響があるかもしれません。どのような費用が無償化になり、自己負担はどう変わるのか解説します。
無償化によって分娩費用はどう変わるのか
現在、出産時には健康保険から「出産一時金」として50万円が支給されています。しかし、今回の改正では、この支給方式とは全く違う仕組みが検討されています。全国同水準の分娩の基本単価を国が設定し、健康保険から医療施設に直接現金給付し、妊婦の負担をなくすというものです。
また、分娩費用は基本的には保険適用外ですが、帝王切開など保険適用の治療を受ける場合は、妊婦の負担に変わりはありません。そのため、この負担軽減のためにすべての妊婦に対する定額の現金給付を行うことも決まりました。
なぜ出産への支援制度が変わるのか
出産費用の無償化が進められる背景には、出産費用の上昇があります。
正常分娩の平均出産費用は、2012年度には約41.7万円でしたが、2022年度には約48.2万円、2024年度上半期には約51.8万円まで上昇しています。
こうした負担を軽減するため、2023年4月には「出産育児一時金」が原則42万円から50万円へ引き上げられましたが、一時金の引き上げ後も医療機関の出産費用は上昇している状況です。
出産育児一時金を増額しても、それと並行して出産費用が上昇すれば、妊婦の自己負担を十分に減らすことができません。政府の検討会でも、一時金の増額が出産費用の上昇につながっているのではないかとの指摘があり、出産費用の「見える化」や価格の適正化も課題とされてきました。
こうした状況から、一律の一時金を支給するだけではなく自己負担が生じない仕組みへと見直されることになりました。
妊婦検診と出産費用に掛かるお金はどう変わる?
妊婦健診にかかる費用
妊娠すると、出産まで定期的に妊婦健診を受けることになります。妊婦健診は病気の治療ではないため、原則として健康保険は適用されません。
各自治体では妊婦健診の費用を助成していますが、自治体によって助成額や対象となる検査が異なり、自己負担もばらつきがあるのが現状です。
今回の制度改正では、妊婦健診についても経済的負担を軽減するため妊婦検診の基準と標準額を定めるとされています。医療機関独自のサービスを受ける場合は自己負担となりますが、それらを見える化することによって妊婦が医療機関を選択しやすい環境整備が進められようとしています。
出産にかかる費用
先に述べた通り、新制度では健康保険から医療施設に直接現金給付されるため、妊婦の負担はなくなる予定です。
たとえば、夜間や日曜・祝日の出産になると割増料金となる医療機関は多いですが、新制度であれば、割増料金を気にすることなく出産できるようになるかもしれません。具体的な給付範囲は今後の制度設計によりますが、妊婦が出産の時間帯による追加負担を心配しなくてもよい仕組みになることが期待されます。
一方で、出産に関するすべての費用が無償になるわけではありません。例えば、出産時のお祝い膳やエステサービスなど、医療機関が独自に提供するサービスを受ける場合は、引き続き自己負担となります。
どこまでが公的な給付の対象で、どこからが自己負担になるのかについては、「出産なび」(https://birth-navi.mhlw.go.jp/)で見える化される予定です。
医療機関を選びやすくなる
妊婦にとって、どの医療機関で出産するかは重要な選択です。現在は分娩費用そのものが医療機関によって異なるうえ、個室料やお祝い膳などのサービスにも違いがあり、「結局いくらかかるのか」を比較するのは簡単ではありません。
現在、厚生労働省の「出産なび」では、全国の医療機関の出産費用やサービス内容などを確認することができます。今後、新制度によって標準的な出産費用の自己負担がなくなり、医療機関独自のサービスは自己負担、と整理できるようになれば、「どのサービスを利用したいのか」「そのためにいくら自己負担するのか」という視点で比較しやすくなりそうです。
「出産なび」による費用やサービスの見える化とあわせて、妊婦にとって自分の希望に合った医療機関を、より探しやすく、選びやすい環境になっていくことが期待されます。
公的保険アドバイザー
前田菜緒
参考:妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会
「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会 議論の整理」
https://www.mhlw.go.jp/content/12501000/001488083.pdf?utm_source=chatgpt.com