株の配当で、後期高齢者医療の負担が変わる?

税・社会保障 2026/11/01

老後の資産形成として、株式や投資信託を保有する人も多いことと思います。最近ではNISAの普及もあり、退職後も配当金を受け取ったり、株式を売却して利益を得たりすることは、決して珍しいことではなくなってきました。


そのような中、今後注目しておきたいのが、後期高齢者医療制度における「金融所得」の扱いです。


2026年5月に成立した医療保険制度改正法では、75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度について、上場株式の配当などの金融所得を、保険料や医療機関での窓口負担割合の判定に、より公平に反映させる仕組みが盛り込まれました。


今月は、なぜ見直しが必要になったのか考えてまいります。


現在、年金や給与、不動産所得などは、原則として所得として把握され、後期高齢者医療の保険料や窓口負担割合の判定に使われます。ところが、上場株式の配当や譲渡益などについては、少し異なっています。


例えば、特定口座で源泉徴収されている上場株式の配当などは、確定申告をしないことを選択できます。その場合、税金は源泉徴収によって納めていますが、市区町村ではその金融所得を把握できないため、後期高齢者医療制度の保険料や窓口負担割合の判定には反映されないことがあります。


一方、同じ金融所得を得ていても確定申告をした場合には、その所得が把握され、保険料が上がったり、医療機関での窓口負担割合が変わったりする可能性があります。


つまり、同じ年金収入があり、同じ金額の株式配当を受け取っている人でも、確定申告をするかどうかによって医療保険上の負担が異なる場合があるのです。厚生労働省は、このような違いを「不公平な取扱い」として見直すこととしています。


改正後は、金融機関などが作成する「法定調書」の情報を活用し、確定申告をしていない金融所得についても後期高齢者医療広域連合が把握できる仕組みが整備されます。


これによって、確定申告の有無にかかわらず、対象となる金融所得を含めて保険料や窓口負担割合を判定することになります。ただし、導入については、金融機関、国、自治体などのシステム改修が必要になるため、少し先になります。


なお、ここで注意したいのは、すべての投資収益が対象になるわけではな、NISA口座で得た非課税の配当や譲渡益は対象外としていますのでご確認ください。


これまで老後の相談では、「年金はいくらもらえるのか」「金融資産はいくらあるのか」「老後にいくら準備すればよいのか」といった点が中心でした。しかし今後は、資産をいくら持っているかだけでなく、その資産からどのような所得が発生するかという視点も重要になってきます。


株式の配当や譲渡益が増えれば、税金だけではなく、後期高齢者医療の保険料や窓口負担割合にも影響する可能性があります。


重要なのは、税制、公的年金、公的医療保険、そして民間保険を別々に考えるのではなく、老後の家計全体として捉えることです。これからの高齢期の資産設計では、単に「いくら増えるか」だけではなく、「その所得によって社会保険の負担がどう変わるのか」まで確認する必要があります。


民間保険の保障内容だけではなく、公的保険と資産運用を横断して説明できる知識が、これまで以上に求められてくるようです。


公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫