高額療養費が変わった。では、医療保険はどう考える?

税・社会保障 2026/09/01

病気やけがで高額な医療費がかかったとき、「医療費がいくらかかるのか」は誰にとっても大きな不安です。しかし、日本の公的医療保険には「高額療養費制度」があるのはご存知の方も多いと思います。家計を支える重要な制度とも言えるでしょう。この制度が2026年8月から見直されました。民間の医療保険を考えるうえでも、まず今回の改正を知っておく必要があります。

今回は、何が変わったのか、そして民間の医療保険をどう考えるべきかを整理します。


今回の改正では、所得に応じた月ごとの自己負担上限額が見直されました。例えば、70歳未満で年収約370万円から約770万円の層では、従来の「8万100円+医療費の一定部分」から、「8万5,800円+医療費の一定部分」へ引き上げられています。つまり、高額な医療を受けた場合の患者負担は、短期間の治療を中心に従来より増えるケースがあります。


一方で、長期療養者への配慮については強化されています。直近12か月のうち3か月以上、高額療養費の対象となった場合、4か月目以降の負担が軽減される「多数回該当」は原則として据え置かれ、新たに「年間上限」が設けられました。年収約370万円から約770万円の層では年間上限は53万円で、年間の自己負担額が上限を超えた場合には、その超過分が還付される仕組みです。


もう一つ、高額療養費を利用する際、ぜひ知っておきたいのが「マイナ保険証」です。マイナ保険証で資格確認を行えば、原則として限度額適用認定証を事前に申請しなくても、同一月・同一医療機関での支払いについて、自己負担限度額を超える部分を窓口で支払わずに済みます。高額な医療費を一時的に立て替える必要がなくなる点は、大きなメリットです。


では、高額療養費制度があるなら、民間の医療保険は必要ないのでしょうか。確かに、日本の公的医療保険は手厚い制度です。しかし、高額療養費の対象は、基本的に健康保険が適用される診療の自己負担部分です。入院時の食事代、差額ベッド代、先進医療の技術料などは対象外です。


さらに忘れてはいけないのが、「治療費」以外の負担です。病気で仕事を休めば収入が減る可能性があります。会社員であれば傷病手当金を利用できる場合がありますが、自営業者など、加入する制度によっては同様の所得保障がない場合もあります。治療が長引けば、通院交通費や家族の負担など、医療費以外の支出も増えていきます。


このように、今回の高額療養費制度の改正は、民間保険の役割を改めて考える機会でもあります。大切なのは、「入院したら1日いくら必要か」だけで考えないことです。


まず、公的医療保険でどこまで保障されるのか。次に、傷病手当金などによる所得保障はあるのか。そして、それでも残る経済的リスクは何なのか。この順番で考える必要があります。


公的保険を知ることは、民間保険を不要にすることではありません。公的保障で守られている部分を正しく把握し、そのうえで不足する部分を民間保険や貯蓄で補う。今回の高額療養費制度の改正を機に、こうした「公的保障と民間保障の役割分担」を改めて考えてみてはいかがでしょうか。


公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫