薬局で買える薬と病院でもらう薬、何が変わる?
風邪をひいたときの解熱薬、胃腸薬、湿布薬など、私たちの身近には、医療機関で処方される薬と、薬局やドラッグストアで購入できる薬の二つの選択肢があります。成分や効能が似ているにもかかわらず、医師が処方する薬と市販薬とでは負担額が異なります。この違いを見直そうという動きが「OTC類似薬の保険給付の見直し」です。
「OTC」とは、「Over The Counter」の略で、カウンター越しに販売されるという意味合いで、医師の処方箋がなくても薬局などで購入できる医薬品をいいます。一方、「OTC類似薬」とは、一般に、OTC医薬品と同じ、または類似した成分や効能を持つ医療用医薬品のことです。今回は、医療の受け方に続き、薬の選び方について考えてみます。
同じような症状でも、医療機関を受診して処方を受ければ公的保険が適用され、原則3割程度の自己負担で済む一方、薬局で市販薬を購入すれば全額自己負担となりますので、軽い症状でも医療機関を受診した方が安いという現象が生じることがあります。平日に医療機関を受診できない人にとって、薬局で同じような成分の薬を購入できることは便利ですが、経済的な負担が大きくなる場合があります。
こうした負担の違いを是正するとともに、増え続ける医療費を抑え、公的医療保険を持続可能なものにするため、2026年5月に成立した医療保険制度改正法に、OTC類似薬の給付と負担を見直す仕組みが盛り込まれました。
対象として想定されるのは、解熱鎮痛薬、アレルギー治療薬など、薬局でも類似する薬を購入できる分野で、まずは77成分、約1,100品目を対象とし、2026年度中の実施が予定されています。ただし、具体的な対象品目、患者負担の計算方法、医療機関や薬局での運用などについては、専門家による技術的な検討が続けられていますので、今後公表される情報を確認する必要があります。
医師が薬を処方する際には、患者の年齢や症状、持病、ほかの薬との飲み合わせなどを考慮して、薬の種類や用法・用量を判断します。必要に応じて検査を行い、治療の効果や身体への影響を確認することもあります。一方、市販薬は自分の判断で購入できるため、相互作用や服用上の注意について十分な情報を得ないまま使用すると、思わぬ健康被害につながる可能性があります。また、一部の医薬品については、意図的な大量服用、いわゆる「オーバードーズ」の問題にも注意が必要です。
今回の見直しによって、OTC類似薬がそのまま市販薬に変わるわけではありません。しかし、薬局で購入できるOTC医薬品との代替が促されることで、自己判断による服薬が増える可能性があります。また、医療機関の受診を控えた結果、病気の早期発見や早期治療が遅れることも懸念されています。市販薬で対応できる人と、医療として管理が必要な人を一律に扱わないことが、制度設計上の重要なポイントです。このため、子ども、低所得者、がん患者、医師が長期使用などを医療上必要と判断した人などについては、別途の負担を求めない範囲が検討されています。
薬局で買う薬と病院でもらう薬の違いは、単なる価格の問題ではなく、医療機関では、診察によって病気の原因や重症度を確認し、その人の状態に応じた薬が処方されます。一方、市販薬には、自分の判断で早く購入できるという利便性があります。それぞれの役割を理解し、症状に応じて使い分けることが大切です。
「自分の身体のことは自分が一番よく分かっている」と自己判断だけに頼るのではなく、制度の内容を正しく知り、必要に応じて医師や薬剤師に相談することが大切です。
公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫