夏のレジャーに備える健康保険
今年の6月は例年になく梅雨らしい季節感を感じますが、あと半月もすると暑い季節が到来します。これから夏に向けて、旅行や帰省など、遠出の計画を立てている方も多いのではないでしょうか。旅行中の計画を立てるのは楽しいものですが、万が一のケガや病気への備えについても考えておかなければなりません。
今回は、旅行先での医療機関のかかり方や、いざという時に役立つ公的保険の仕組み、そして民間保険との組み合わせなど、初夏のレジャーシーズン到来に向けた備えの知識をまとめてみます。
国内旅行であれば、基本的にはどこの医療機関でも、マイナ保険証または資格確認書を提示すれば、通常通り3割の自己負担で受診が可能です。しかし、保険証を忘れてしまったり、紛失してしまったりした場合、医療機関側ではその人が公的医療保険に加入しているか確認が取れないため、窓口では一旦医療費の全額(10割)を支払うことになります。
全額を支払っても、全てが自己負担になるわけではなく、後日、加入している協会けんぽなどの保険者に対して療養費の支給申請を提出することで、本来の自己負担分を除いた額(通常は7割)の払い戻しを受けることができます。
払い戻しの申請には、医療機関が発行した「診療報酬明細書」と「領収書」の原本が必要になります。同月内に保険証を持っていくことでその場で精算してくれる場合もありますので、軽傷で済んだ場合など、スピーディーに動くこともポイントです。
次に、旅先の山奥で動けなくなったり、緊急手術が必要になり、地元の病院から大都市の設備が整った病院へ転院したりするケースもあるでしょう。ここでよく誤解されがちなのが「移送にかかる費用」です。
先月もお伝えしましたが、通常の救急車による搬送は、原則として無料です。民間救急やドクターヘリなど、医師の指示による出動は患者に直接請求されないことが多いですが、患者側の希望や都合で民間の寝台車などを使って転院・移動する場合、その費用は自己負担になります。
健康保険には「移送費」という給付がありますが、「緊急的な必要性があり、医師の指示で適切な医療を受けられる最寄りの病院へ移送された場合」などに限られますので、地元の主治医のところへ帰りたいといった自己都合による転院の移動費は、原則として健康保険の対象外となるため注意が必要です。
また、海外では日本の健康保険証は使えませんが、日本の公的医療保険に加入していれば「海外療養費制度」を利用することができます。これは、海外の医療機関で支払った医療費について、帰国後に申請することで一部が払い戻される制度です。しかし、海外療養費として戻ってくる金額は、海外で実際に支払った金額ではなく、その病気やケガを日本国内で治療した場合にかかる医療費をベースに計算されることにも注意が必要です。
公的保険は非常に手厚いものの、カバーしきれない隙間が存在します。こうした公的保険で補えない部分については、旅行保険や傷害保険などの民間保険が役立つ場面があります。「ホテルの備品を壊した」時の賠償責任や、「カメラを落として壊した」といった携行品損害との組み合わせが活きてきます。
旅行の準備というと、どうしてもガイドブックや持ち物のチェックに目を奪われがちですが、「もしも」の時の医療体制と保険の仕組みを理解しておくことこそ、最大の安心材料になります。「楽しい思い出」を守るためにも、ぜひこれらの知識をご家族や身近な方と共有しておくことで安心が広がります。
公的保険アドバイザー協会
理事 福島紀夫