離婚後に遺族年金を受け取れるのは誰?

年金 2023/11/07

離婚時には、さまざまな取り決めをすると思いますが、子どもがいる場合は特に親が死亡した場合についても想定しておきたいものです。そこで、離婚後に元パートナーが死亡した場合、遺族年金を受け取ることはできるのか、ここでは、妻が子を引き取り、夫が死亡した場合を前提にケースごとに解説します。


遺族年金の仕組み

遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。離婚後は、元夫が死亡したとしても、妻はどちらの年金も受け取ることはできません。しかし、子は父と親子関係があるため、受け取れる場合もあります。遺族基礎年金、遺族厚生年金それぞれ受け取れるルールが違いますから、まずはそのルールを確認します。

・遺族基礎年金

遺族基礎年金は、元夫が養育費を払っているなど生計同一要件が認められれば、子に受給権が発生します。ところが、子に生計が同じ父または母がいる間は、子には遺族基礎年金は支給されないというルールがあります。今回のケースでは、子が母に養われているため遺族基礎年金は支給停止となり、受け取ることはできません。

・遺族厚生年金

では、遺族厚生年金はどうでしょうか。遺族厚生年金を受け取れる条件は、元夫が厚生年金加入中に死亡した場合、あるいは、現在は、厚生年金に加入していないけれど、過去に遺族厚生年金に加入していて、年金加入期間が25年以上ある場合等です。

しかし、遺族厚生年金の受給対象者でなければ、受け取ることはできません。遺族厚生年金には、支給の優先順位があり、妻と子の関係で言うとその順番は、

子のある妻>子>子のない妻

です。この優先順位を踏まえて、次から、受給対象者かどうかケースごとに解説します。

  • 元夫が再婚していない場合、再婚しても元夫に子がいない場合

この場合は、元夫が養育費を払っているなど生計同一要件が認められれば、子に遺族厚生年金が支給されます。支給される期間は子が高校卒業まで、子が障害年金の障害等級1級または2級の状態にある場合は20歳までです。

  • 元夫が再婚して後妻との間に子ができた場合

この場合は、元夫が養育費を払っているなど生計同一要件が認められれば子に受給権はあります。しかし、遺族厚生年金は子のある妻(ここでは後妻)に最優先で支給されます。したがって、前妻の子の遺族厚生年金は支給停止となります。

  • 夫が子のある女性と再婚した場合

この場合は、元夫が養育費を払っているなど生計同一要件が認められれば子に受給権があります。しかし、後妻の子と元夫が養子縁組している場合は、②と同様、子のある妻(後妻)に最優先で支給されますから、前妻の子の遺族厚生年金は支給停止となります。

ただし、「子」とは、高校卒業までの子を言います。(障害等級1級または2級の状態にある場合は20歳までの子)したがって、後妻の子が前妻の子より年上なら、後妻の子が高校を卒業すると、後妻は子のない妻になるため、今度は前妻の子が高校を卒業するまで遺族厚生年金を受け取ることになります。

一方、養子縁組をしていない場合は、後妻は子のない妻になりますから、前妻の子に遺族厚生年金が支給されます。前妻の子は高校を卒業するまで(障害等級1級または2級の状態にある場合は20歳まで)遺族厚生年金を受け取ることができます。


離婚後の遺族年金は複雑

離婚時に養育費の取り決めをしていたとしても、元夫が死亡すると養育費を払ってくれる人はいなくなります。離婚後に子どもが遺族年金を受け取れる場合もありますが、ケースによって受け取れる場合、受け取れない場合があり、離婚時にそれを予想することはできません。そのため、まずは民間の保険に加入することが重要でしょう。

とはいえ、遺族年金は万一の際に生活を支えてくれる大きなお金です、遺族年金の仕組みは複雑ですが、仕組みを知っておけば備えることができるかもしれません。お子さんの年齢と照らし合わせながら遺族年金の知識をつけておくと安心です。
 

公的保険アドバイザー 
前田菜緒